年功序列賃金制度や終身雇用制は、日本的雇用慣行として、日本経済が成長する過程では高く評価されてきた。しかしながら、九一年のバブル崩壊以降、日本経済は未曾有の停滞を経験した。その過程でこの慣行も大きく揺らぎ始めた。ゆっくりと時間をかけて、新卒社員を教育していく余裕が、企業に失われてきたのである。教育投資の必要のない即戦力の人間を中途採用する傾向が強くなり始めた。二〇〇〇年に入って実施された企業に対するアンケート調査結果を見ても、そうした傾向が強くなっている。
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新卒採用者に対する企業の採用方針にしても、「即戦力」なる言葉が使われ、大学卒業生でも基礎的な訓練の必要がない人間を採用する傾向が強くなっている。もちろん、これまで行われてきた日本企業のOJTがなくなったわけではない。依然として、かなりの企業において、正社員に対する企業内訓練が実施されていることは事実である。しかし、終身雇用制が揺らげば、企業にとって自らが時間をかけて人材を育成していくメリットは減少していくことも事実なのである。さらに、非正規雇用が趨勢的に増加している事実は、企業のOJTの対象とならない雇用者が増えていることを意味している。それは、とりもなおさず日本における職業教育・訓練システムそのものの新しいあり方が問われていることを意味する。問題は、これまで主として企業の負担によって行われてきた職業教育・訓練のコストを、誰が負担するのかということである。